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最高裁判所第二小法廷 昭和43年(オ)1214号 判決 1969年4月18日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人野林豊治の上告理由第一について。

法定地上権は抵当権設定当時に存在する建物の利用に必要な範囲の土地に及ぶものであり、土地の抵当権設定後その実行前に同一土地内において地上の建物が移転されまたは増改築されても、前の建物の利用に必要であつたものと認められる範囲にとどまつているかぎり、土地の競売によつて右範囲において法定地上権が成立することを妨げないものと解すべきところ、本件土地の抵当権設定後本件建物は本件土地内において移転されたが、右移転は、従前の建物の利用に心要な範囲であつて、これについて法定地上権の生ずべかりし範囲内においてされたものとした原審の認定判断は、証拠に照らして是認することができ、したがつて本件土地の競売の結果本件建物の敷地部分について法定地上権が発生した旨の原審の判断に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第二について。

原判決の認定によれば、被上告人は、昭和三四年四月七日、本件建物の所有者都築巳之吉からその贈与を受け、同日所有権保存登記を経由したというのであつて、上告人が競落により本件土地の所有権を取得したのが右の日より後であれば、被上告人のため本件建物の敷地につき法定地上権が成立したものであり、また、上告人の本件土地所有権取得が被上告人の本件建物譲受けより前であれば、競売当時の建物所有者都築巳之吉が法定地上権を取得し、被上告人は、本件建物とともに右法定地上権を譲り受け、本件建物につき所有権保存登記を経由したことによつて、右法定地上権の取得につき、競落人である上告人に対抗しうるに至つたものと解すべきであるから、いずれにせよ被上告人は法定地上権に基づき本件建物の敷地部分の土地を正当に占有しているものということができる。したがつて、これと趣旨を同じくする原審の判断に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一)

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